目 次
はじめに
2023年秋
今年は例年に無くヒグマの目撃情報が後を絶たない状況です。個体数増加と猛暑による捕食対象の減少が考えられるといいます。
特にヒグマは縄張り意識が高く、他のヒグマを寄せ付けない習性があるため、餌にあり付けない個体なんかは人里に降りるほかはないわけです。
そんな訳で私も特に狙っていたわけではないのですが、春から秋にかけて幾度かヒグマと遭遇し、撮影のチャンスを得られました。
しかし、
お恥ずかしい話、全くその存在を知らなかったのですが、自然公園法という法律があります。
令和3年に改正。
さらに令和4年にも改正。
そして令和5年10月にも一部明確な数値基準を設けるというように規制が強化されています。
何故そのように頻繁に改正が必要だったのか?
自然公園法は、美しい自然環境を保護し、維持するための法的な枠組みです。
今回はその自然公園法に焦点を当て、その基本的な概要、役割、そして我々が持つべき責任について考察してみましょう。
そして自然公園法の一部規制強化について、その背景と私の思う所を記述していきたいと思います。
時間のある方は是非お付き合いください。
野付半島のエゾシカ
自然公園法とは
優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的(第1条)として定められた法律。
国立公園、国定公園および都道府県立自然公園からなる自然公園を指定し、自然環境の保護と、快適な利用を推進する。
Wikipediaより
日本の自然公園法の歴史は意外と古く、1957年(昭和32年)に制定されました。
生物の多様性という言葉も正直私はここ数年でよく目にするようになりました。
内容的にも、ざっくりとしていて理解に苦しみますが、要は・・・
自然を守ると言う事ですべての生物も守る事につながる。
と言う事だと思うのです。
ちがうかな?
では、生物の多様性ってなんでしょう。
生物多様性とは
生物に関する多様性を示す概念で、生態系、生物群系または地球全体に、多様な生物が存在していることを指す。生態系の多様性、種多様性、遺伝的多様性(遺伝子の多様性、種内の多様性とも言う)から構成される。
生物多様性の定義には様々なものがあるが、生物の多様性に関する条約では「すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない。)の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む」と定義されている。
Wikipediaより
私に理解力がないのでしょうか?・・・
すべての生物・・・ということでしょうかね。
キタキツネ
自然公園法の役割
自然公園法は、豊かな自然環境と生態系を保護することを主な目的としています。指定された自然公園内では、植物や動物の保護、環境の維持が重要視され、その生態系のバランスを守ります。これによって、多様性豊かな生態系が未来にわたって継続することが期待されます。
観光やレクリエーションは、自然公園において一つの重要な側面です。しかし、これらが過度に行われると自然環境に悪影響を及ぼす可能性があります。自然公園法は、観光やレクリエーションの実施を調整し、持続可能な利用を促進する役割を果たしています。
自然公園法は地域社会と連携し、地元の文化や伝統を尊重しつつ、地域経済への貢献を促進します。地元住民が自然公園の管理に参加し、その恩恵を享受できるような仕組みを構築することで、共生的な関係を築くことが期待されます。
1.ルールとガイドラインの遵守
自然公園を訪れる際は、指定されたルートやガイドラインを守ることが大切です。これによって、自然環境への影響を最小限に抑え、他の訪れる人々との調和が図られます。
2.ゴミの持ち帰りとリサイクル
自然公園内ではゴミの持ち帰りが原則です。ゴミは環境への負担となりますので、持ち帰って適切に廃棄し、リサイクルに協力しましょう。
3.教育と意識の向上
自然公園の重要性や法律の存在について、周りの人々にも啓発活動を行うことが重要です。環境に関する正しい知識を共有し、みんなで持続可能な未来を築く手助けとなります。
エゾフクロウ
自然公園法第37条第1項第3号の規制強化
知床国立公園では、観察や撮影のため、車道上で停車・降車してヒグマ等に不用意に近づくカメラマンや観光客が後を絶たず、その過度な接近等がヒグマの人なれを招き、深刻な人身事故に繋がることが強く懸念されています。
国立公園又は国定公園の特別地域等で、野生動物の生態に影響を及ぼし公園利用に支障を及ぼすおそれのある「餌やり・接近・つきまとい」などの行為をみだりに行うことが規制対象となりました。
環境省HPより抜粋
国立公園又は国定公園の特別地域、海域公園地区又は集団施設地区内において、みだりに野生動物(鳥類又は哺乳類)に餌を与えること、著しく接近し、又は付きまとうこと※を行うことが規制されます。
※
<自然公園法第37条第1項第3号>
野生動物(鳥類又は哺乳類)に餌を与えることその他の野生動物の生態に影響を及ぼす行為で政令で定めるものであって、当該国立公園又は国定公園の利用に支障を及ぼすおそれのあるものを行うこと。
<自然公園法施行令第6条>
法第37条第1項第3号の政令で定める行為は次に掲げるものとする。
一 野生動物(法第37条第1項第3号に規定する野生動物をいう。)に餌を与えること。
二 野生動物に著しく接近し、又はつきまとうこと。
環境省HPより抜粋
知床国立公園では、ヒグマに対する餌付け、著しい接近、つきまとい等の行為によりヒグマの人慣れが助長されて問題個体を生じさせ、公園利用者に対してつきまといや威嚇等を行い、その結果として遊歩道が閉鎖されるなど、国立公園の利用に支障を及ぼす事例が多数発生してきました。令和4年4月の改正自然公園法の施行を受け、野生動物の生態に影響を及ぼし公園利用に支障を及ぼすおそれのある行為として、餌付け、著しい接近及びつきまといが規制対象となっていましたが、具体的な数値基準は策定されていませんでした。
・自然公園法第37条第1項第3号の具体的な数値基準
著しい接近:ヒグマとの離隔距離が30メートル未満となるまで接近すること
つきまとい:ヒグマとの離隔距離を50メートル未満に保ち、つきまとうこと
※環境省職員の中止指示に従わず、これらの行為をやめない場合には自然公園法違反となり、30万円以下の罰金が科される場合があります。
環境省HPより抜粋
以上、抜粋記事も多用しながらご説明させていただきました。主に観光客に対しての規制強化だとは思います。
年々具体的に強化されている印象ですけど、それだけ後を絶たないと言う事でしょうね。
知床周辺に限らず「餌やり・接近・つきまとい」等に関しましては知床が世界遺産に認定されるずっと前から言われていた事でもあります。
滅多に訪れることが出来ない場所だから尚更に野生動物と触れ合いたい気持ちは私もよくわかります。
最近はカメラを趣味にしている方も増えてきておりますので、運よく野生動物と遭遇したのなら是非にもその姿をカメラに収めてみようと思うのは当然の事と思います。
しかし、自然公園での行き過ぎた行為や無配慮な行動が後を絶たないという現実があります。
モラルやマナーだけでは思わぬ人身事故に繋がりかねませんので、明確で具体的な規制はとても重要なことと考えられます。
エゾシマリス
野生動物の撮影について
そんな私も知床に限らず道東を中心に至るところにカメラを持ち込んで野生動物の撮影を行っています。
野生動物の撮影は、日常からかけ離れて美しい瞬間を切り取る素晴らしい経験ですが、同時にその活動が動物や環境に影響を及ぼす可能性があります。自然に分け入り撮影する場合は環境を損なわないよう十分に心がけることが必要です。
最近の撮影で得られた成果をこの場をお借りして紹介してみたいと思います。
エゾシカの撮影
エゾシカの撮影は道東も含めて北海道では特に人気があります。子連れのエゾシカは特に警戒心が強く望遠レンズを使用し、近づきすぎないように注意が必要です。
ここ中標津から近場の撮影スポットは、やはり野付半島でしょう。
エゾシカ
エゾシカは特有の鳴き声や仕草を示すことがあります。これらを理解することで、動物たちの気持ちや状態を把握し、良い瞬間を逃さないようになります。また、エゾシカが威嚇や不安を感じるときは、そのサインに注意を払い、撮影を中断することが必要です。
エゾシカ
エゾシカの生息地は美しい自然環境と結びついています。撮影者は自然の美しさを損なわないよう、トレイルや指定されたエリアを守り、ゴミを持ち帰るなど、環境への配慮を怠らないようにしましょう。
エゾシカ
エゾシカの生息地では、地元の規則や法規制が存在することがあります。これらを守り、地元のコミュニティとの協力を大切にしましょう。また、個々の撮影地域でのローカルなルールやガイドラインも確認して遵守することが重要です。
エゾシカ
タンチョウ鶴の撮影
特に道東に住んでいる人間からしてみればタンチョウ鶴は天然記念物とは言え、特に珍しいものではありません。
しかし、いざ撮影を試みるとその難しさに直面いたします。
タンチョウ鶴が身近で見られる地域ではあっても、生態や習性を理解し、最適な瞬間を逃さないようにするためには、熟練の技術と忍耐が求められます。
タンチョウの親子
やはりタンチョウ鶴もエゾシカと同様に子連れの場合はとても警戒心が強く、人間に対して攻撃的になる可能性があることを理解しておくことが重要です。
タンチョウの親子
タンチョウ鶴
ヒグマの撮影
今年は特に目撃情報や捕獲情報が過去最高であると毎日のようにニュースで報道されています。
今年のカラフトマスの遡上数が過去最低水準にあると言います。
また、猛暑の為に本来ヒグマの餌となる木の実なども不足し腹を空かせたヒグマが民家まで出没する始末。
ヒグマ
たまたま見つけた羅臼町のエゾヒグマ。
波に半身をつかりながらも、逃さぬよう前足でしっかり捕まえているのは貴重なカラフトマスでしょうか。
魚の皮までも食べつくそうとする様子から、よほどの空腹だと伺えます。
こちらに向けた視線は、カメラを構えた私に対する威嚇の為か、はたまた人類に対する怨恨の念か・・・
捕食中のヒグマ
捕食中のヒグマ
無知であることの危険性
法で定められている以上、それは全ての人が守らなければ秩序が保たれません。しかし、私のように勉強不足でそもそも法律を認知していない人も多数いるのではないかと思います。
では、この法律を認知していない場合、どのような懸念材料が出てくるか考えてみたいと思います。
まずは法的な違反の可能性があるということ。
自然公園法は、自然公園内での行動に関する様々な規制を含んでいます。例えば、キャンプ場でのキャンプや野生動物への餌の与え方に関する制限があります。これらのルールを知らないと、法に違反する可能性があります。
次に事故や危険へのリスク。
自然公園内には自然の要素があり、その中での行動には安全に関する考慮が必要です。例えば、危険な地形や急流、野生動物の存在などが挙げられます。無知な状態でこれらのリスクを想定できないと、事故や危険にさらされる可能性があります。
そして、自然環境への悪影響が考えられます。
自然公園はその美しさや生態系が保護されている場所です。無知な行動が環境への悪影響を与える可能性があります。例えば、適切でない場所でのキャンプやゴミの不適切な処理が挙げられます。
これらの危険性を回避するためには、事前に自然公園法や公園内のルールについて調査し、安全な行動と自然環境への配慮を心掛けることが重要です。地元の公園管理当局や観光協会が提供する情報を確認し、適切な準備をすることで、公園をより安全かつ楽しい場所として利用できます。
全ての人が全ての法律を知ることは現実的ではありません。しかし、自然公園法に詳しくなくても、法律に関する知識は必要に応じて身につけ、必要なときに適切に利用することが重要です。
エゾリス
野生動物との適切な距離感とは
野生動物との適切な距離感を確保することは、動物の安全と自分自身の安全を確保するために非常に重要です。
以下は、一般的な原則と考慮すべきポイントを私なりにまとめてみました。
野生動物は自然の一部であり、彼らの領域や行動を尊重することが重要です。動物たちの安全と快適さを最優先に考えましょう。
特に子供がいる場合や繁殖期など、動物は特に警戒心が高まります。これらの状況では距離をより遠く保つことが必要です。
望遠レンズを駆使すれば遠くからでもクリアで迫力のある写真を撮影することが可能です。この方法で動物たちの自然な行動を捉えることができます。
動物たちは自分たちの警戒心を表現する為に、さまざまなサインを見せます。耳を立てたり、舌を出したり、尾を振るなどの行動に注意を払いましょう。これらは攻撃的な意図を示す可能性があります。
動物の行動を予測し、その動物がどのように反応するかを理解することが大切です。予測が難しい場合は特に、十分な距離を保つことが安全です。
動物が突然方向を変えたり、動きが急に変化したりする場合、これは警戒やストレスのサインとなります。このような場合は、安全な距離に後退することが重要です。
訪れる地域での地元のガイドラインや法規制があれば、これを確認し、従いましょう。地元の専門家やガイドのアドバイスに従うことも大切です。
グループで動物観察を行う場合は、距離を適切に保ちながらも、一斉に動くことで危険を分散することができます。
野生動物との適切な距離感は、動物たちの自然な行動を観察しつつ、安全性を確保する上で不可欠です。尊重と慎重さをもって、動物たちの環境に優しく接するよう心がけましょう。
ヒグマの爪痕
終わりに
一般的に、法律を知らないことによってその法律を違反してしまうことは、法的責任を問われる立場に置かれる可能性があります。法律は社会の秩序を維持し、公共の利益を守るために存在しています。法を守ることは社会的な責任であり、無知を理由に法律を守らないことは、法の下での平等と公正を損なう可能性があります。
自然公園法は、私たちが自然を楽しむ一方で、その貴重な環境を保護し続けるための大切なツールです。私たちの行動が地球環境に与える影響は大きいですが、自然公園法を理解し、尊重することで、未来の世代に美しい自然を残すことができるでしょう。自然公園を訪れる際は、その自然と共に学び、楽しみ、守っていくことを忘れずにいたいものです。
繰り返しになりますが、知床国立公園では、令和5年10月13日(金)から、ヒグマへの著しい接近は距離30m未満、つきまといは距離50m未満が、自然公園法に基づく規制の対象となります。
※環境省職員の中止指示に従わず、これらの行為をやめない場合には自然公園法違反となり、30万円以下の罰金が科される場合があります。
じゃれあうキタキツネ
参考
機材紹介
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